アルコールで本当の自分は見えるのか

アメリカに留学していたころ、知り合いのお姉さんがこんな話をしていた。

私は全くお酒が飲めないが、酒好きの友人がしつこく飲酒をすすめてきた。なぜ?ときいたら「本当のあなたを見せてほしいから」と言われたの、と。

 

体質的にアルコールを受け付けない人に対して、本当のあなたを見せてほしいからという理由で酒を飲ます。

ピーナッツアレルギーの人に、ピーナッツはマジで美味いから食べてほしい!と言ってピーナッツを食わすみたいなもんだ。

 

そのお姉さんは「あぁ、この人たちはアルコールを飲まないと本当の自分になれないんだ。だから素面の私も本当の私ではないと思っているんだ、と思った」と話してくれた。

 

 

私がアメリカに留学していたころ、韓国人の友人がたくさんいた。彼らとの文化の違いには本当に驚かされたが、その中のひとつがアルコール文化だった。

他人にアルコールを飲ませることが当たり前で、人それぞれアルコールへの体質が違うという概念はないように見えた。

(のちに日本で社会人になり酒飲ませる文化をまだ続けている上司を見て、まだこんな人がいるのかと思ったが)

 

飲めないと何度も言っているのに毎回飲まそうとしてくる韓国人の友人に、「私はあなたに喫煙を強要したことはないのに、なんであなたは私に飲ませるの?」と聞いたら笑われた(当時私は割とヘビースモーカーだった)。

 

だが私には喫煙の強要と飲酒の強要の違いが全くわからない。

タバコを吸うとすごいリフレッシュするし、リラックスするし、いい匂いだし、肺が真っ黒になる以外はいいこと尽くめで、その上飲酒のように吐き散らかすこともない。

なので飲酒より喫煙の方を是非オススメしたいところだが、実際体に悪いし、ヤニクラを起こす人もいるし、そんなことはしない。

 

でも、無理矢理飲酒を勧めてくる人は、いずれ相手の体調が悪くなることを100パーセント理解した上で勧めているわけで、もうサイコパスなのか?とさえ思う。

 

また、別の韓国人の友人曰く、「酒を飲むとその人の本性が出る。だから酒を飲ませればその人が本当にいい奴かどうかわかる。父親が娘を嫁にやる前に娘の彼氏に酒を飲ませてベロベロにするのはそのためだ」と言っていた。

 

吐瀉物を調べれば、文字通り腹の内が分かるということか。

 

また中には「アルコールを飲むのを嫌がる=自分が拒絶されている」と感じる人がいるみたいだが、アルコールを無理に進めてくるあなた自身を拒絶しているんですよ、と言いたい。

 

 

とは言えかくいう私も、酒を人前で飲みたくない理由の1つとして「自分のコントロールを失いたくない」というがある。

外面だけいいタイプなので、ふわふわ〜といい気分になって大胆なことを言ってしまったらどうしよう、恥ずかしいことをしたらどうしよう、と思う。

つまり、酔っ払って本性を曝け出してしまったらどうしよう!と思っているわけだが、そう思うことこそが私の本性なのだと思う。

 

そして、自ら酒を大量に飲んでベロベロになって、騒いだり吐いたりしている人を見ると、一体どういう心理状況なのか本当に不思議になる。

 

人前で粗相をするのが快感なんだろうか?それが彼らの「本当の自分」?

もし私が誰かの前でそんなことをしたら、その人たちとは一生会えなくなるに違いないし、向こう10年は思い出して悶絶するだろう。

 

だが、もし本当にゲロとか自分の醜態を人に見てほしい性質の人なら、酒は格好の言い訳になるんだろう。そして、規律を重んじる社会で生きるのは大変苦しいことだろう。

気の毒だとは思うが、(純粋にお酒の味が好きで嗜んでいる人は別として)酒飲みとは一生分かり合えそうにない。

 

 

ちなみに、韓国人の友人の中にも酒をお上品に嗜んでいる人はたくさんいたし、飲めない人もいた。酒を強要してくる友人たちも、視界に酒が入らなければとてもいい人たちだった。