障害者の「害」は社会の中にあるという話

私は、めちゃくちゃ普通の人である。

普通の家庭に生まれ、普通の学校に通い、普通の大学を出て、普通の企業に勤めている。

成績もいたって普通で、人間関係も普通。

とにかく特徴がない普通の人だ。

 

だけど、私は多分発達障害で、普通の人の中に混ざって普通に生きるのにはそれなりに苦労してきた。

私の「特徴」は、特定の音が苦手なこと、蛍光灯などの明かりが苦手なこと、話し声があまりよく聞き取れないこと、注意力散漫なことなどで、これを「普通」に合わせるべく苦労してきた。

 

ところで、私が一緒に住んでいる彼氏も「普通」の人らしい。私からすればものすごく変わり者だと思うが、とにかく普通で、そしてとても音痴だ。

私たちの住んでいる家は線路沿いにあり、四六時中電車の音が聞こえる。

彼は大抵の人と同じように、電車の音が気になるらしい。

ところが私は電車の音は気にならず、飛行機とか電車とかの音を聞くとむしろ安心さえする。

私が気になるのは、ささやき声や、聞こえるか聞こえないかくらいの高めの音、音程の外れた歌などで、聞くと動悸が激しくなって頭痛がし、どうにもこうにも我慢ならなくなる。

 

 

そんなわけで今朝、私がまだ寝ているときに、彼氏が先に起きて小さな鼻歌を歌いながら身支度をしていたときのこと。

私はその音痴で微妙な音量の鼻歌で目覚めたが、気持ちよく歌っている彼氏に「音痴だからやめて」と言うのも憚られ、身悶えしながら耐え忍んでいた。

鼻歌攻撃にゼェゼェしながら私がスマホで調べたことは、「聴覚過敏 治し方」である。

 

もしもこの世に彼氏と私の2人しかいなければ、私たちは「電車の音が苦手な人」と「小さくて音痴な鼻歌が苦手な人」でしかなかったはずだが、

現実世界では彼氏は「普通の人」で私は「聴覚過敏」になる。

自分でも、私は普通ではなく「聴覚過敏」という特殊な何かなんだと思っているわけだ。

(まぁ治るなら治った方が嬉しいけど)

 

これはいろんなことに言える話だと思う。例えば、私は前述の通り、多分発達障害である。

病院で診断を受けたわけではなく、受ける必要性も無いかなと思っているが、たまに「あなたは発達障害なんですよ」とお墨付きを貰った方が楽なのではないかと感じることもある。

今まで普通に振る舞うのにすごく苦労して苦しんできたけど、自分は普通じゃないんだから普通に振る舞えなくて当たり前なんだ〜!と解放してもらいたい気もする。

 

しかし、「発達障害」なんて仰々しい名前が付いていても、中身は人付き合いが苦手とか、注意力散漫とか、こだわりが強いとか、ささやき声が苦手とか、そんなもんである。

そんな特徴を「障害」と名付けなきゃいけない社会って一体なんなんだろう?そんなにみんな一緒がいいの?普通ってなに?

こっちは「普通」に合わせるのが苦しくて、さらに人格障害という新たな障害にも片足を突っ込んでいるというのに。

 

ここで、「障害」エピソードをもうひとつ。

最近の参議院選で、重度障害者の議員が当選し、車椅子でインタビューを受けている様子を、職場の上司とテレビで見ていたときの話。

こんな人たちが当選しても、どうするんだろうねえ。夜通し国会やるときだってあるし、介助の人もずっと一緒に居なきゃいけないのは大変だし、、、」と、かなり不満そうな上司。

 

いや、もう当選したんだから、これからどうするか考えようぜ!と言いたいところだが、この人の本音はそういうことじゃない。

自分たちと違う人が議員になるという、異例を認めるのが嫌なだけ」に尽きると思う。

 

数ある議席のうち、たった2議席だけが重度障害者の方になったからといって、明日から全家庭にスロープを付ける法律が出来るわけじゃない。全国民に夜通し介助をしてくれと頼んでいるわけでもないのは、明らかだ。

この人はただただ、自分と異なる人を受け容れるのが嫌だし、怖いし、めんどくさいんだと思う。

 

もし自分が車椅子で生活する人だったら?この世のほとんどの人が車椅子だったら?

「こんな人たちが当選してどうするの」なんて言わないんじゃなかろうか。

たまたま自分が車椅子に乗っていないだけなのに。たまたま自分が障害者じゃないだけなのに。

 

人間は自分の中の「普通」を探して、それに当てはまらない人を排除したがる生き物なんだと思う。

本能の赴くまま排除し続けて、想像力が無くなってしまって、「普通」の優越感にしがみついてるんだろうなあ。

 

まあ、とりあえず何でもかんでも、なんとなく反対しとく人っているよね。

↓このMaurice Williamsonさんの有名なスピーチ思い出した。

Maurice Williamson's 'big gay rainbow' speech - YouTube